ほたる灯合わせ

 うだるような暑さが襲いかかる夏に、俺は蛍に照らされる彼女を見た。
 日が沈み気温が下がったというのに、寝付けないほどの熱を残したあの夜。どうせ明日は日曜日。すぐに寝なくてはと焦る必要はない。
 近くにあった川辺を思い出し、夜中に部屋を抜け出した。そして、ふらりと足を運んだそこに、蛍と話す彼女はいた。


「あなたたちは、あと何日?」
 ふわりふわり。光が川を彩っていた。
 この時間帯、しかもこんな暗い森の側。何かの見間違いではと自分の目を疑ったが、確かに一人の女性がそこには佇んでいた。
 闇に消え入りそうなほどに華奢な身体。黒に溶け込む豊かな髪。光に照らされ浮かび上がる、優しげな白い横顔。


 月が川に映り込んでいた。それと、水面に反射する無数の柔らかな光。夜の静けさで空いた胸に、その温もりが染み込んでゆく。
 そして、その光たちに照らされる、彼女の姿。
 ずくずくと、心臓が不思議な音を立てる。謎の焦燥感が襲いかかってきた。熱くなった血が身体中を巡る。
「ホタルブクロって、知ってますか?」
 突然、一枚の絵が動き出す。
 空気を揺らした細い声。
 その声に、表情に、空気に、何故か既視感を覚えた。
「聞いたことは、」
 気づかれているとは思わなかった。いつからわかっていたのだろう。声もかけずじっと見つめていたことを、今更ながらに恥じた。
 俺の返答に「そうですか」と相槌を打つと、彼女は川辺を離れて砂利に座り込む。その瞳は空を見つめていた。蛍たちは彼女を追うこともなく水の上で浮遊し続けている。
 何処かで鳴いている虫の声が再び耳に届く。鳴き続けていたはずのその声は、いつの間にか俺の頭に届かなくなっていたらしい。
 どうしてこんな時間、こんな場所に。聞きたいことはあっても、それを口にすることは出来なかった。
「あなたは、この近くに?」
 光に照らされなくても、彼女の白い顔は暗闇の中でぼんやりと浮かんでいた。手元の懐中時計を再び点灯させ、蛍たちには向けないよう気をつけながら地面だけを照らして歩く。
 砂利の音が夜に響いた。彼女は質問の答えをなにも言わずに待っている。
「ええ、すぐそこのアパートに」
 近づく俺を怖がることもせず、彼女は笑って「どうぞ」と隣に招き入れた。腰を下ろすと、彼女の目線は再び川へ。
「ホタルブクロって、植物でしたっけ?」
「そうです」
 澱むことなくされた返事。会話はそれで途切れてしまい、再び沈黙が訪れる。
 それでも、不思議と焦りはしなかった。昔馴染みとの間に生まれるような落ち着きや安心感が、何故かそこにはあったのだ。
「蛍を、閉じ込めるんです」
 彼女の瞳は、川を照らす蛍へ。
「その中でぼんやりと浮かぶ光が、綺麗で」
 ふわり。彼女が微笑んだ。
 その笑みは、温かな光を放つ蛍のようで。
「本当に、綺麗で」
 瞳を細めて、柔らかく微笑みながら。そう、まるで、愛おしい誰かを想うような表情で。
 涙が静かに瞳から溢れ出た。彼女の白い頬を透明な雫がゆっくりと流れてゆく。


――綺麗、本当に、綺麗ね。
 ジリジリと脳を焦がす映像。再び訪れた焦燥感。
 俺の中には、泣きながら微笑んだ“あの娘”が。


「あの、」
 聞こえた声に耳を、目を向けた。彼女の濡れた瞳が俺をまっすぐに見つめている。
 ぼやけた頭を覚ますように息を吐き出す。突然流れた映像は、俺が知る由もないものだった。あんな女性と出会ったことはないし、誰かのあんな表情を見たこともない。悲しい人生だ。
「大丈夫ですか?」
 頬にあった雫はすっかり拭われていた。気遣うような視線に軽く笑いかける。上手く笑えていたかはわからないが、彼女は安堵の笑みを返してくれた。
「この川で誓いを交わした男女がいるんです」
 彼女の声がはっきりと耳に届く。心なしか、今までよりも随分しっかりした言い方だった。
「そのお話を、聞いてくれますか?」
 俺の瞳をまっすぐに見つめながら、今までにないほどの真剣な表情で。その勢いに圧され、俺はいつの間にか首を縦に振っていたのだった。




 彼女が話した物語の舞台は、開国をしてからすぐの日本。異国の文化が流れ込み、混沌とした中にも活気があった不思議な時代だ。主人公に添えられたのは、そんな頃にある場所で出会った一組の男女。
 彼女の話は、酷くリアリティに富んだものだった。どうしてそんなことを? そう思うほどに細かいところまで彼女は語った。まるで、当事者のような口振りで。




「今日は、この辺にしておきましょう」
 彼女の言葉にはっとして時計を見る。時刻は深夜一時。女性が出歩いて良いような時間ではなかった。
 物語は途中だったが、そんなことは関係ない。
「……今日は?」
 時間に気を取られて危うくスルーしかけた言葉。確かに、話の続きが気になってはいるが。
「はい。また、来週、この場所、この時間に」
 念を押すようにゆっくりと。そして、気圧されたように俺はまた首肯した。意思の強い女性には勝てない性分だ。
「家まで送ります」
 では。そう言って立ち上がった彼女を引き止める。
 家の位置を出会ったばかりの男に知られるのは嫌かもしれないが、こんな時間に女性を一人で帰すわけにはいかなかった。せめて近くまで。そう思いつつ彼女を見遣る。
 だが、俺の心配は杞憂に過ぎなかったらしく。
「では、よろしくお願いします」
 気のせいでなければ、自惚れでなければ。嬉しそうな表情で、彼女は座ったままでいた俺の腕を引いた。


 此処です。あるマンションの前で彼女はそう言った。恐らくはオートロックの、高そうな建物。俺が住むアパートとは大違いだった。
 彼女が俺の側を離れてマンションへと一歩踏み出す。くるりと振り返り、頭を下げて「ありがとうございました」と丁寧にお礼をされた。首を横に振り、なるべく優しい笑みを返す。こんなこと、どうってことなかった。
「あ、あの」
 マンションへと歩みを進めた彼女を呼び止める。俺の声に気づいて体の向きをこちらに変えた。先程までとは違った人工的な光に照らされた彼女を見て、本当にこの世界の住人なんだと何故か安心した。
「あなたの名前、は?」
 俺の問いに彼女が噴き出す。時間が時間なだけに、声は抑えられていた。
「そういえば」
 そう言って笑いながら、目尻に浮かんだ涙を指先で拭う彼女。少々、笑いすぎではないだろうか。
「かおり、です」


――カヨ、といいます。


 襲いかかる既視感と、重複する声。
 微笑む顔が、聞き取りやすいようにとゆったり動く唇が、ぴったり重なってゆく。


「そうです、か」
 くらりと眩暈がした。先ほどからやって来るこの衝動は何なのだ。俺の中には無いはずのものが、どうしてこうもしつこく纏わり付いてくる?
「俺は、」
 苗字を言おうとして言葉を詰まらせる。彼女は名前だけを言った。流石に部屋まで把握されるのは避けようという考えからかもしれない。それは確かに正しい判断だし、そのくらいの警戒心は持っていて欲しい。
 自分も、彼女と同じように名前だけを名乗るべきだろうか。
「俺は、耕一郎です」
 何故か彼女の表情が固まる。不味いことでも言ってしまっただろうか、俺の名前に何か因縁でもあるのか? そう不安にもなったが、彼女はすぐ何てことない表情で笑いかけてきた。
「じゃあ、耕一郎さん、また来週」
 俺の名前を呼ぶ声が、また、頭の中に浮かぶ女性とシンクロした。


 それから、何週間経っただろう。
 季節は変わり、川にいた蛍たちはみんなそろって姿を消した。寝れないほどに暑かった気温はすっかり下がり、今は毛布ではなく布団を使って眠っている。


 そして、彼女が語り続ける物語も随分進んでいた。
 今、女性は男性が継いだという料理屋の手伝いをしている。そして、その料理屋には気難しい客が多く訪れた。その客たちが無茶な要求をしてくる度、二人は相談をしながらその要求に応えていったらしい。


「……と、お客様は言ったのです。
 さて、耕一郎さん。今度、二人はどんな対応をしたと思いますか?」
 物語はいつもここで終わっていた。
 彼女は二人に突きつけられた無理難題を一通り説明すると、そこで話を切る。俺は、一週間その要求に応えるための方法を考えてここに持ち寄り、毎回彼女と答え合わせをしていた。
 もう、既視感には随分と慣れたものだった。あの感覚が無くなるということはなく、むしろ彼女と会う回数を重ねるごとに酷くなっている。それでも、こう何回もあると慣れてしまうのが人というものらしい。今では「またか」と思う程度だ。


「耕一郎さん、」
 彼女を送る帰り道。段々と冷えてきた空気に今後を心配しつつ夜空を仰いでいたが、彼女の声で視線を下げる。
 たん。細い足が勢いよく一歩踏み出した。今日は上の方で一つに結ばれていた髪がゆらりと動く。さらさらとしたそれが音もなく空気を舞った。
「千夜一夜物語って、知ってますか? アラビアンナイトともいいますが、」
 小さく頷きかけてから首を傾げる。聞いたことはあるが、どんなものかと聞かれるとわからない。「名前だけなら」と答えると、彼女は目線を夜空へ投げた。そう、先ほどの俺と同じように。
「女性と一夜を過ごした後にその女性を殺してしまう。そんなことを繰り返していた王様に、一人の女性が近付くんです。彼女は毎夜面白い物語を途中まで語りました。その物語の続きが気になった王様は、彼女を殺すことが出来なかった。
 千夜一夜物語は、その女性が毎夜語っていた物語、っていう設定なんです」
 へえ。相槌を打ちながらも頭の中は疑問符で溢れていた。それがどうしたというのだろう。
「私も、同じなのかもしれません」
 彼女が俺の方に顔を向ける。
 どきりとした。いつもの既視感ではなく、ただ、単純に。
 彼女の真剣な瞳に、その中に含まれた不思議な色に、彼女が醸し出す、いつもとは違った雰囲気に。
「私はきっと、あなたの中から消えたくなくて、死にたくなくて、殺されたくなくて。だから、こんな風に、卑怯な真似をするんです。
 こうしていれば、私の物語が続く限り、私はあなたの中で生き続けることができるから」
 悲痛な表情だった。今にも泣き出してしまいそうな、崩れてしまいそうな。
 そして、消えてしまいそうに、切ない声だった。
「また、来週」
 何も返すことが出来なかった俺に、彼女はいつもより小さな声でそう言った。黒の髪が再び宙を踊る。
 光溢れるマンションに吸い込まれてゆく背中を見つめながら、俺は一人で彼女の言葉を思い出していた。




 翌週。俺はもう随分冷えてきた夜の川辺で彼女を待っていた。いつもなら此処に来ると必ず先にあった姿は無く、珍しいなと思いつつも腰を下ろす。曇った空には星も月もいなかった。


 それからしばらく待ってみたものの、彼女の姿が現れる気配は無く。先週の彼女を思い出し、頭を抱えた。
 気まずい、とか。あり得なくはないだろうが、あの発言の後にも彼女ははっきりと今日の約束を口にしていた。彼女がそれを黙って破るとは思えない。
 スウェットのポケットにしまい込んでいたスマートフォンを取り出す。最早交換しただけになっていた連絡先を引っ張り出し、電話番号を画面に表示した。番号の上に指を置いて、それでも離すことは出来ず長押ししてしまう。勿論、機械は反応すること無く悠々とそのまま彼女の番号を表示していた。
 息を吸って、吐き出す。落ち着け。大丈夫、連絡したっておかしくはない。もしかしたら何かあったのかもしれないだろ。
 番号の上に指を置く。今度はすぐに離した。ダイヤルされた十一桁の番号。接続音の後、呼出音が耳元で鳴り響く。彼女の声が聞こえるかと期待したが、一向にその気配はない。諦めかけて、耳元から機械を離した時。
 何処からか、着信音らしきものが聞こえた。



 急いで腰を上げ、音の発信源を辿った。彼女のマンションがある方へ足が向かう。
 彼女がどんな着信音にしているかなんて、勿論知るはずがない。だから、確信なんて無いけれど。
 時間が経ち過ぎたようで、微妙に耳元から離されていたスマートフォンからは「ただいま、電話に出ることが……」という無機質な音声が流れていた。響いていた着信音も消えていることを確認し、今度は素早く番号をタップする。
 接続音の後に、呼び出し音。冷えきった静かな空間には再び着信音が鳴り響いた。俺が歩みを進める度に、その音はどんどん大きくなる。



 そして、音の在り処にあったのは、横たわる華奢な身体、その身が纏うパーカーのポケットから飛び出たスマートフォン、地に広がる彼女の豊かな黒髪。
 頭の中で、何かが弾けた。
「カヨ……!」
 自然と出た名前だった。
 頭の中で“あの日”の光景が蘇る。
 もう“同じこと”は、繰り返したくないんだ。
 “また”君を失うなんて、そんなこと。“また”何も出来ないなんて、そんなの、もう御免なんだよ。
 彼女の身体を抱きかかえる。熱があるのだろう、苦しそうな顔をしながら荒い息を吐き出していた。頭を撫で、背中を撫で、頬を撫で。
 そうだ、そうだったんだ。だから、彼女は。
 ぴくりと動く瞼。弱い力で俺の手を掴む細い指。うっすら覗いた瞳が俺を捉える。
 嗚呼、そうだ。あの時も、この瞳をしていた。
「おかえりなさい、耕一郎さん」
 物語の主人公は、俺たちだったんだ。




 彼女をどうにか部屋まで運び、ベッドに寝かせた。冷えてきたというのにも関わらず、毎週真夜中、あんな場所で会っていれば体調を崩すのも無理はない。
 そんなこと、わかっていたはずなのに。それでも、なんとなくあの場所でしか会えない気がしていたのだ。あれ以上、彼女に踏み込んではいけない気がしていた。
「思い出したんですね、」
 指示通りに動いて作り上げたホットミルクを差し出す。そのカップを大切そうに両手で包み込みながら、彼女は俺を見つめていた。
「思い出したよ」
 出会った時から幾度となく覚えた既視感。奇妙なほどに一致した答え合わせ。これら全てに、ようやく納得がいった。
 そう、潜んでいた記憶は、俺と彼女が前世に得ていたものだったんだ。
「私が前世の記憶を取り戻したのも、そう前ではありません。耕一郎さんとあの川で会う、二日ほど前です」
 彼女曰く。
 俺と会う二日前に、彼女はある夢を見た。あの川で前世の伴侶と再会する夢だったそうだ。
「その夢から覚めると、流れ込むように記憶が蘇ったんです。ただ、それを前世の記憶と決めていいのかはわかりませんでした。夢か何かかと思いましたから」
 直感的にわかっていたんだろう。それでも、そんなことをすんなり信じられるほどロマンチストではなかった。俺だって同じだ。今でも何となく、本当にこれを信じていいのかわかっていない。
「でも、会えばわかると思ったんです。此処にいたら、本当に会えるのかもしれないって。何かわかるかもしれないって。
 実際、耕一郎さんに会った時、この人だって思ったんです」
 瞳を覗くようにしっかりと合わせられた目線。その瞳を見返しながら記憶と重ねる。そばかすは無くなっているし、目だって二重だ。鼻も高くなっているし、あの頃の面影なんてどこにもないのに。
「お互いに姿形は違います。それでも、なんとなく、この人だってわかったんです」
 俺の名前が前世と同じだとわかったとき、確信はより確かな物になったという。偶然にしては出来過ぎだろう、と。
 それからは俺の記憶が戻るよう、意識的に前世と同じ言動をしていたという。苗字を名乗らなかったのもそのせいだろう。倒れてしまったのはただの偶然だと、彼女は頭を下げながら言った。結果的にそれが記憶の引き金を引いたのだけれど。




「覚えていますか? ホタルブクロのこと」
 彼女と初めて会った、いや、再会を果たした日。確かに、彼女はその話をしていた。
「ああ、思い出したよ」
 あの時はわからなかったけれど。今なら、はっきりと思い出せる。


 あの川に彼女を連れて行って。ホタルブクロの中に、蛍を閉じ込めて。
――私と、ずっと一緒に、生きてくれませんか。
 そして、俺はそれを手渡しながら、彼女に愛を、永遠を誓ったのだ。


「でも、」
 彼女の表情が曇る。その意味も、今となっては容易く理解できた。


 彼女は本当に嬉しそうにしながら俺の言葉を受け入れた。だが、その数日後。彼女は突然倒れた。昼時、賑わう店内で。


「私は、耕一郎さんと、生きられなかったから」


 必死に、彼女の名を呼んだ。どうにか重い瞼を押し上げて、か細い声で俺の名前を口にしていたことを思い出す。その後どうにか意識を保ち、容態も安定したように見えた彼女。
 そして、彼女は言ったのだ。
――耕一郎さんの、お味噌汁が飲みたい。
 安心させようとしたのか、無理に微笑んで。作るよ、今すぐに。そう言うと、本当に嬉しそうに笑ってくれた。
 でも、彼女はそれを食べることなくこの世を去ってしまったのだ。材料を用意しようと少しそばを離れた隙に容態は急変。俺が戻った時には、もう、どうにもならなかった。
――耕一郎さん。
 その間際に、彼女は俺の瞳を見つめながら、必死にこう繰り返したのだ。
――今度は、今度こそは、一緒に、


 彼女の悲しげな表情に目を遣った。同じようにあの頃を思い出しているに違いない。
 しかし、そんな静寂の中に響く、一つの音。
「ふ……っ」
「わ、笑わないでください!」
 頬を赤に染めた彼女が俺を睨み付ける。どうやらお腹が空いているらしい。随分と元気な音を聞いてしまったが、この時間はしょうがない。そこまで恥じることもないのに、彼女の顔は今にも倒れそうなほどに真っ赤に染まっていた。食欲が減退していないなら、体調が改善するのは早いだろう。
 少し安心しつつ、未だ頬の色が落ち着かない彼女を見つめる。拗ねてしまったのか、恥ずかしいのか、はたまたどちらもか。まったくこちらに顔は向けてくれないけれど。
 約束を、果たせるだろうか。彼女もそれを望んでいると良い。今まで誰かに出逢うことができなかったのは、彼女と再会するためだった。そんな風に考えるのは、いけないことだろうか。
「作ろうか、味噌汁」
 前世の記憶は朧気だから、今の俺が作る物しか出せない。そんな物じゃ、料理屋を営んでいた前世の自分にはちっとも敵わないだろうけど。
「食べてなかっただろう」
 恥ずかしそうな、悔しそうな瞳がこちらを見つめている。笑いそうになるのを堪えて微笑んだ。これ以上彼女を拗ねさせるわけにはいかない。
「……いただき、ます」
 彼女の小さな声に、俺はまた少し笑った。



見たよ!